ID管理は企業や組織において、セキュリティと効率性の両立へ繋がる重要な要素です。
不正アクセスを防ぎつつ、必要な権限をスムーズに割り当てるためには、適切な運用ルールの下で正確に作業を実施する必要があります。
この記事では、適切なID管理とはどのようなものなのかを解説し、それを実現するためのアプローチを紹介します。
ID管理とは
ID管理は、なんらかの「ユーザー認証」を行なっているのであれば必須となる管理業務です。保有しているIDを適切に管理し、セキュリティリスクを防ぎながら円滑にビジネスが行える状態を保つことと考えることができます。
社内システムや入退室に関わるICカード、クラウドサービスへのログインIDなど、様々なID管理するべき対象となり得ます。
IDは利用するシステム毎に発行されることが一般的であり、数が増えるにつれて全てのIDを把握することが難しくなるため、適切な管理が求められます。
また、組織としてどのようなIDを保有しているのかを把握することも極めて重要です。
適切な権限が設定されており、不要なIDが放置されていないか?など、組織のセキュリティを守るために重要な観点となります。
ID管理は、ID一覧を記録しておくだけではなく、それぞれのIDを適切に運用するための仕組みと言えるでしょう。
ID管理が必要な理由や実施するメリット
ID管理を実施するべき理由やメリットを解説します。
想定外の不正アクセスを防止
未使用のIDが削除されずに残っている、権限が付与されているICカードが保管されているなど、ID管理がされていないことが原因のセキュリティリスクは多くあります。
リソース管理
本来不要な権限が付与されているIDにより不正な操作が行なわれて情報漏洩に繋がってしまうリスクがあります。
ID管理により、アクセスが必要な人物のみリソースへアクセスできる状態とすることで、悪意のある不正操作はもちろん、操作ミスによる事故を防止することに繋がります。
法的対応
個人情報保護法の第19条では、不適正な利用の禁止として「個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。」と定めています。
ID管理が疎かな状態は不当な行為を実行しやすい環境であると考えられ、個人情報保護法に抵触する恐れがあります。また、法令を遵守し顧客やステークホルダーの情報を守ることは、個人情報保護法の観点でなくとも企業の責務と言えるでしょう。
ID管理はセキュリティ事故の防止や法令遵守の観点で必須であり、適切な方法で実施する必要があります。
ID管理に関する運用ルールの制定ポイント
ID管理は、企業で重要な役割を果たします。その運用ルールを確立するにあたり、注意すべきポイントを解説します。
管理部門や責任者の決定
誰がID管理の責任を持つのかを明確にします。
責任者や管理部門が不明確な場合はトラブルへの対処や日常の円滑な運用が難しくなってしまうためです。
運用フローの決定
IDの発行や削除、変更などの手続きを明確にします。
対応パターンを表現したフローと合わせて、具体的な手順書を用意することで作業ミスを防止することに繋がるでしょう。
運用手順書の整備
上述した管理側の手順書の他に、従業員向けのID申請手順書を作成すると運用のスムーズ化を見込めます。
ID管理部門が正しい運用をしていても、実際にIDが不要になった、権限変更が必要、といったトリガーは管理部門以外で発生することが多いでしょう。
そのため、管理部門以外の従業員もID関連の作業を理解し、実践できる環境を整えます。
従業員への周知
社内でのID管理がどのように実施され、従業員が守るべき運用はどのようなものなのかを周知します。
前述の手順書を配布や、必要に応じて説明会やルール遵守のための啓蒙活動も効果的です。
ID管理の運用ルールを制定する際は、各種パターンを想定し、従業員が負担なく効率的な作業ができるよう意識することが大切です。
適切なID管理を実現するためのステップ
最適なID管理は、業務内容や運用ルール、プライバシーポリシーにより異なります。
しかし、多くの環境で必要となるステップも存在します。
管理するIDの洗い出し
どのIDが何の目的で使用されているかを一覧化します。
これにより、不要なIDや過度な権限を持つIDを特定・修正することが可能となります。
アクセスするリソースの洗い出し
各IDがアクセスする必要があるリソース(サーバーやアプリケーションなど)を明確にします。
どのIDがどこへアクセスするのかを整理することで、思いがけない経路からの情報流出や不正アクセスを防ぐことに繋がります。
ロールや権限の設定
各IDに適切なロールや権限を設定します。
リソースへのアクセス制御を行なうためには、IDの権限が整理されており、どのような使い方がされるのかが明確になっていることが大切です。
一般社員や部門長、IT担当者など、業務によって必要な権限は異なります。実態に即した権限付与を行ないましょう。
ID管理ツールや認証システムの選定、実装
IDと権限の管理を効率的に行うために、ID管理ツールや認証システムを活用することも有効です。
近年ではWebサービスや社内システム以外にも、クラウドを活用するシーンが急増しています。
既存のツールやシステムで対応が難しい場合は、安全かつ効率的にID管理を行える仕組みの導入も視野に入れましょう。
運用テスト、レビュー
上述した要素を決定・実装し、運用テストを行います。
テストで問題が見つかった場合は修正と再テストを繰り返しながら調整を行ないます。
ID管理は、大幅な運用変更となるケースが多くあります。
事前に計画を立て、やるべきことを明確にした状態で着手しましょう。
ID管理はセキュリティの要!ずさんな管理にならないために
システムやサービスを利用するために必須となるIDは、セキュリティを担保するための重要な仕組みです。
しかし、IDを適切に管理できず、第三者による不正アクセスや情報の奪取が行なわれた場合、企業にとって致命的なダメージを伴う事故が発生してしまうリスクを十分に理解する必要があります。
適切なID管理を実現するためには、当記事で紹介した基本的な考え方も重要ですが、そもそもセキュリティリスクの低いシステムを活用することも極めて重要と言えます。
通常のIDとパスワードによる認証など、セキュリティの低い方式では、適切ID管理がされていても、第三者により認証が成功してしまうリスクを排除できないためです。
近年では生体認証が広く活用されていますが、その中でも顔認証システムは企業のニーズにマッチしている方式と言えます。
認証に本人の顔が必須なため第三者による偽装が極めて困難であり、その上で正規ユーザーによる認証は顔を向けるだけで完了するシンプルさを兼ね備えているためです。
顔認証を正しく運用することで、組織のセキュリティは大きく向上するでしょう。
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