
ARの技術は広く知られていますが、MRという技術があることはご存じでしょうか。ARの技術だと思われているものが、実はMRの技術であったということがあるかもしれません。
ARとMRは似ていますが、同じではありません。そこで、今回は、ARとMRについて、ARとMRの違いと、それぞれの活用事例について紹介します。
AR・MRとは?|それぞれの概要解説

まずはAR・MRとは何かについて、詳しく見てみましょう。
ARとは?
ARとは、「Augmented Reality」の略で、「拡張現実」のことです。現実空間上に仮想の視覚情報を重ねて映し出すことで、現実世界を拡張する技術です。
例えば、歴史的観光地でスマートフォンに名所を映せば当時の建造物が再現されるアプリなども、ARを活用しています。
MRとは?
MRとは、「Mixed Reality」の略で、「複合現実」のことです。物体を正確な位置に表示させ、あらゆる角度から眺めることが可能です。現実世界の中に仮想世界の映像を、まるでそこにあるかのように映し出すことができます。
MRを映し出すには、専用のゴーグルを使用して仮想世界の情報を表示させたり、操作したりする必要があります。製造業の現場作業でのマニュアルの表示やトレーニングなど、主にビジネスの現場で活用されることが多いでしょう。
ARとMR、それぞれの違いとは|違いを比較

それではARとMRの違いは何でしょうか。さまざまな観点から見る違いは以下のようになります。
AR | MR | |
---|---|---|
特徴 | 現実世界の情報に3Dやテキストの情報を加えて現実世界を拡張する | 3Dや画像などの仮想現実の情報を表示し、後ろに回り込んだり、情報にタッチして入力したりもできる |
メリット | スマートフォンやタブレットなど身近なもので楽しめる | 同じMR空間にいる人が同時に同じ体験ができる |
デバイス | スマートフォン・タブレット・ARグラス | ウェアラブルデバイス(ヘッドマウントディスプレイ) |
コスト | 安価に開発できる | 高度な3D技術が必要なため高価 |
活用シーン | エンターテインメント・プロモーション・ビジネス | 主にビジネス |
上記比較表の中で、今回は特徴・メリット・活用シーンの3点に関して詳しく見てみます。
特徴
ARの特徴は、スマートフォンなどのデバイスに映っている現実世界の情報に、3Dキャラクターや画像・文字情報などの仮想的な情報を重ねて映し出すことです。
これに対してMRは、映し出した仮想的な情報に回り込んで360度眺めることができたり、情報にタッチしたりできます。より現実味を帯びて情報を再現できるのがMRなのです。
メリット
ARのメリットは、特別なデバイスは必要なく、比較的誰しもが所持しているようなスマートフォンやタブレットで楽しめることです。また、スマートフォンで楽しめることで、撮影したARや画像を保存したりSNSに投稿したりもできます。
MRのメリットは、特殊なデバイスが必要ですが、同じMR空間にいる人が同時に同じ体験ができることです。例えば街頭の3Dキャラクターを同じ場所でMRデバイスを装着している人と共有できたり、MRを通じてまるでその場にいるかのような遠隔Web会議をしたりできます。
活用シーン
ARの活用シーンは、広告・プロモーション、3Dキャラクターを表示させるなどのエンターテインメントや、教科書に立体物を表示させるなどの教育分野、製造業のマニュアルの表示などで活用されています。対して、MRの活用シーンは、シミュレーションや業務効率化などのビジネス分野、医療分野が主です。
MRの業界別活用シーン

ここまでARとMRの特徴やそれぞれの強みなどについて解説しましたが、ここではMRに焦点を当てます。
MRの具体的な活用シーンにはどのような場面があるのでしょうか。業界別に分け、大まかにご紹介します。
医療分野
医療分野では、手術のシミュレーションに活用ができます。実際の手術前に、MRを通して患者の体内を確認し、手術の方法を共有するのに適しているのです。
複数の人でMRを共有することで、同じ対象を見ることができ、手術の手順や切除する部位を認識の相違が起きることなく確認できます。
航空業界
航空業界では、トレーニング用に活用されています。
乗務員や整備士はデバイスを装着し、眼前に表示される仮想の航空機を操作します。また、エンジンの再現も実現しており、操作手順に従って矢印が表示されることで自分の手の動きでスイッチを作動させたり、計器の数値を変更したりできるため、リアリティのあるトレーニングが可能です。
さらに、時間やタイミングに縛られず、繰り返し訓練が行えることも特徴でしょう。
製造業での整備作業
MRは、製造業では整備作業の業務効率化に活用されています。
デバイスを装着すると整備箇所に作業手順書を表示させることができるのです。紙の手順書を確認しながらの作業だと、両手が塞がれ手間がかかりますが、MRで表示させることにより手順書を確認しながら作業ができ、業務が効率化されます。
経験の浅い整備士が効率的に整備作業をするのに役立っています。
AR・MRの実際の活用事例

ここまで、ARとMRの違い、業界別のMR活用シーンについて見てきましたが、AR・MRの実際の活用事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは具体例を交えて紹介します。
ARの活用事例
ARは、エンターテイメントからビジネスまで幅広く利用が考えられます。そのため、多岐にわたり活用されていることも特徴です。
バーチャルメイク
ARを活用した例で有名なものが、バーチャルメイクです。バーチャルメイクとは、デバイスに映る顔の画像にAR技術を使って擬似的にメイクを施すサービスです。顔写真を撮影し、化粧品をタップするだけでアイシャドウ、マスカラ、口紅などを施すことができます。
従来の肌に直接メイクを施す手法の場合、さまざまなメイクを試すにあたって、一度落としてから再度他の色を試す、という手順を踏む必要がありました。しかしバーチャルメイクであればツールをタップするだけで化粧を落とすことができるため、何色でも何度でもメイクを試すことが可能です。
化粧品メーカーやECサイトで活用されています。
地図アプリ
マップアプリのナビにもARは活用されています。スマートフォンのカメラに映し出した風景内に矢印や道路名などを表示させて、行き先を案内してくれるサービスが提供されているのです。
徒歩での移動中も、立ち止まって周辺の景色を移すことで進むべき方向に矢印が表示されます。より現実世界に反映された道案内が行われることで、利便性が向上しています。
MRの活用事例
デバイスが必要な場面が多くなりますが、その特性上点検や訓練等の場面で活用されることが多いようです。
ピアノレッスン
A社が提供しているMRデバイスには、指の動きを認識する「フィンガートラッキング」と視線の動きを認識できる「アイトラッキング」の機能があります。
その機能を使い、バーチャルの鍵盤を表示させて、自分の手でピアノを弾くことができるようなアプリがリリースされています。
そのアプリでは、曲に合わせてバーチャルの鍵盤が光り、その通りに弾くと高得点が表示される仕組みです。物理的にピアノを設置する場所がなかったり、騒音を出したくない場所にいたりする場合でもピアノレッスンができるでしょう。
コールセンターの業務改革
コールセンターの業務改革アプリケーションも、MRを使って開発されています。
コールセンターのオペレーターに対し、MRで実機がそこにあるかのように表示させることができるシステムです。これにより、問い合わせがあったお客様に対してオペレーターが対象の実機の詳細を確認しながら回答でき、スムーズな対応につながります。
リモートワークのオペレーターでもMRデバイスとシステムを使うことができれば、受電の場所に関係なくお客様対応が可能となるでしょう。
点検業務ソリューション
MRで検査・点検箇所を記録・可視化するアプリも提供されています。
対象箇所にジェスチャーによりピンを設置し、その箇所に音声入力でメモを追加できて、設置したピンはデジタル付箋として空間上に記憶されます。写真やメモを紐付けて保存することができ、表計算ソフトのレポートとして保存することも可能です。
建設や設備メンテナンス業における報告業務などで活用ができるでしょう。
徐々に身近になっていくARやMR
AR技術・MR技術は、画像認識技術や位置把握の技術の進歩により、より安価に、身近な場面で活用されるようになりつつあります。ARとMRの違いは、対象物を他社と共有できるか・360度体験できるかどうかです。
MRは2022年時点でビジネスでの利用が主ですが、ARは身近なデバイスで体験できることからビジネスからエンターテインメントまで幅広いシーンで活用されています。
JCVでも、さまざまなシーンで活用できるARソリューションの提供を行っています。
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