
ARに使用されている、「ARマーカー」というものをご存知でしょうか。読み込むことでARコンテンツを表示させる発端となる画像やイラストのことです。
ARマーカーを使ってコンテンツを作成したいと考える事業者の方もいるでしょう。そこで、この記事ではARマーカーの種類や仕組み、実際にアプリに導入した事例を紹介します。
ARにおいて使用される「マーカー」とは?その特徴は?

ARにおいて頻繁に使用されている、「マーカー」とは何のことでしょうか。ここでは、ARの概要から種類、ARマーカーの特徴などを説明します。
AR(拡張現実)とは
ARとは「Augmented Reality」の略で、日本語に訳すと「拡張現実」となります。実在する環境にバーチャルな視覚情報を重ねて表示する技術です。AR技術を使うと、カメラで写した風景に、作成された3Dのコンテンツがまるでその場にあるかのように再現することができます。
ARの種類
ARの種類は2種類あります。それぞれの特徴について、詳しく説明します。
・ロケーションベース型
GPSの位置情報に紐付けて視覚情報を表示させる方法です。画面上のどの位置に表示するか、厳密に決定できることが特徴です。例えばスマートフォンと組み合わせて、過去の建物を再現したり、現在地を元にして星座の位置や形を表示する天体観測などに使用されたりしています。
また、特定位置で希少なモンスターが出現したり、お店に特別なスポットを配置し、そこへ行くとクーポンがもらえたりするなど、ゲームにも使用されており用途は多彩です。
・ビジョンベース型
画像・空間認識の技術を使い、指定されたオブジェクトを読み込むことでARを表示させる方法です。設置してあるマーカーを読み込んで表示させるマーカー型と、カメラで写した周囲の風景から特定のオブジェクトを認識させ表示するマーカーレス型の2種類があります。
ビジョンベース型は、スマートフォンなどの端末で画像を認識させるものが分かりやすいでしょう。例えばレシートを読み取りARを出現させたり、顔写真に耳を付けて装飾ができたりするもの、顔を認識してメイクできたりするものなどがあります。
ARマーカーとは
ARコンテンツを表示させる発端となるものです。登録されている写真やイラストなどをカメラで写すと、指定された位置にARコンテンツの表示や再生がされます。以前は白黒の四角い図形が主流でしたが、現在は技術も進化し写真や印刷物などさまざまなものを用いることができます。
ARマーカーとQRコードの違い
QRコードはテキスト情報のみを記憶するのに対し、ARマーカーはコンテンツの直接表示や再生をすることができます。よく見かけるのは、Webサイトのテキストを読み込むことです。QRコードはWebサイトにアクセスしなければコンテンツを閲覧できませんが、ARマーカーは、読み込むとコンテンツを直接呼び出せるのです。
ARマーカーの仕組み

続いて、ARマーカーの仕組みについて詳しく見てみましょう。
ロケーションベース型の仕組み
ロケーションベース型は、端末で位置や方位、傾きなど必要な情報を取得します。3D空間の中でターゲットを認識し、表示したい場所に情報を表示させることができます。この方法では、位置情報に関連した建物の説明など、文字や画像での付加情報を表示させることに使用されます。
位置情報や方位などの情報はスマートフォンのような端末において簡単に取得できるため、特殊なライブラリなどがなくてもコンテンツの表示が可能な点がメリットです。
ビジョンベース型の仕組み
ビジョンベース型にはマーカー型とマーカーレス型があります。
マーカー型では、スマートフォンなどの端末でマーカーを読み込ませることでARを表示させられます。この方法のメリットは、マーカーを設置した場所に正確にコンテンツを表示させることができる点です。マーカーを読み込めるアプリの中にはARエンジンが搭載されています。エンジンがスマートフォンのカメラでマーカーを認識して、該当するコンテンツを表示させる仕組みです。
マーカーレス型は、特殊な画像などを必要とせず、カメラで撮影している風景の「椅子」や「机」などを認識する方法で、近年普及している方法です。
ARマーカーを活用したアプリの事例

ここでは、ARマーカーが実際にアプリに活用されている事例を詳しく紹介します。
地図アプリ
A社の地図アプリは、徒歩でマップの経路表示をした際に、周囲の情報をカメラに写すと経路表示の矢印などをカメラの映像に重ねて表示させることができます。実際の風景を見ながら矢印が表示されるため、経路を把握しやすいという特徴があります。また、画面内にランドマークを表示することもできるので周辺のスポットが把握しやすいでしょう。
さらに、他のユーザーへ自分の居場所を伝える機能もあり便利です。友人が現在地を共有すると、自分の居場所から友人のいる場所までの距離と方向が画面上に表示されます。
地下鉄の検査業務の研修用アプリ
B社の地下鉄事業では、維持管理の研修用にアプリが活用されています。元々利用していた検査業務用のタブレットアプリケーションの機能を拡張したもので、画面上にトンネルや橋りょうなどの変状を仮想的に表示することができます。これにより実際の検査業務と同じ手法や手順で維持管理技能の研修が可能となっています。
トンネルや橋りょうにマーカーを設置しているところもありますが、壁面自体をマーカーとする技術も開発しており、マーカーの張り替えや取り替えが不要になることで、メンテナンスの手間が省けています。
教科書が立体的になるアプリ
C社では、教科書が立体的になるアプリを開発しています。教科書の指定されたページを端末のカメラで読み込むことで、図形や多面体が立体的に表示されます。教科書のように立体物を平面で理解するより、立体で奥行きまで表示された方がイメージしやすく理解もしやすいでしょう。教科書をARマーカーとして使用した、楽しく勉強ができるようになるアプリです。
作品をマーカーにするアプリ
D社のアプリでは、街中やイベント会場にあるさまざまなマーカーを探して読み込むことでムービーが浮かび上がります。また、ムービーと一緒に動画の録画や写真撮影も可能で、撮影したものをSNSなどにもアップロードができることも特徴です。芸能人とコラボし、芸能人の作品自体をマーカーに設定し、端末をかざすと作品が動き出すサービスも提供しています。他にも、街中にある企業ロゴなどをマーカーにして広告を表示させることなども可能です。
名刺に付加情報を表示させるアプリ
E社では、誰でも簡単にARを作れるサービスを提供しています。AR化したい素材をクラウド上にアップロードするだけで簡単にコンテンツを作成できます。それを活用した事例が、「ARマーカーを付随させた名刺」です。
紙の名刺にARマーカーを載せ、カメラで読み込むことでさまざまな情報が表示されます。例えば、営業職の名刺の場合、名刺に載せてある顔写真をスマートフォンのカメラにかざすことで営業担当者のPR動画を見ることができるのです。
このように名刺にARを活用することで、名刺単体では伝えきれない付加情報を載せることができたり、動画が再生されて取引先に強いインパクトを与えたりすることが可能です。
技術の進歩で活用の幅が広がるARマーカー

ARマーカーにはロケーションベース型とビジョンベース型があり、認識させると、スマートフォンで撮影している風景にARコンテンツを直接表示させることが可能です。マーカーを活用したアプリの事例も紹介しました。テキストベースのQRコードよりも便利で、今後活用の幅も広がっていくことでしょう。
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